現状と今後の取り組み

少子高齢化社会における高齢者の支援の不安定さを打開するために「地域包括ケアシステム」という取り組みがなされている。高齢者のサポートを医療機関だけにまかせずに、地域の自治体や市民が一体となって対応していこう、というものだ。地域の活性化や医療機関の負担軽減が期待されている。しかし現状ではまだまだ懸念が多く、解決しなければいけない課題が多い。

まず早急に対策が必要なのが、地域包括ケアシステム自体の認知度の低さだ。日本理学療法士協会の統計によると、このシステムについて知っていた人の割合は23.8%にとどまった。高齢者と普段関わりのない人たちが、システムについて知る機会が無いことが大きな原因と考えられる。さらに医療関係者の中にも、詳しくは知らないという人が多く見られた。地域包括ケアシステムは地域全体が共通の認識を持っていなければ、上手く機能させることができない仕組みだ。システムの概念を、一般化していく工夫が必要だ。

現時点では、システムに参加する十分な人材がいないことも問題である。核家族が一般的になり、高齢者は自分の子どもが自立したあとは孤立してしまうことが多い。さらに家族が遠方に住んでいると、周りにサポートしてくれる人がいなくなってしまう。そうなると、同じ地域の他人に頼ることになるのだが、これがそう上手くいくはずもない。

その結果、結局医療機関に頼らざるを得なくなってしまうのだ。そして医療・介護業界が忙しくなり、離職率が高まり、さらに人材不足となる、という負の連鎖が出来上がってしまう。医療・介護業界の外から、システムに従事できる人材を確保する仕組みを作っていかなければならない。

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